「インバウンド頼みの地域創生」は、なぜ失敗するのか?越境ECこそが、地方の“稼ぐ力”を解放する本当の鍵である

訪日外国人観光客が過去最高を記録し、観光地は連日多くの人で賑わう。円安も後押しとなり、日本の地方経済は、インバウンド需要によって息を吹き返したかのように見えます。
しかし、その光は、日本の隅々にまで、本当に平等に届いているのでしょうか? あるいは、その光は、ごく一部の「ゴールデンルート」だけを強く照らし、多くの地域はその影に取り残されているのではないでしょうか。
初めまして。グロース戦略パートナーのJapanConnectAdvisoryです。 今日は、多くの人が語りたがらないインバウンド需要の「不都合な真実」と、その先にある、日本の地方が真に自立し、世界で稼ぐための、持続可能な戦略についてお話しします。
1.データが示す、インバウンド需要の「残酷な格差」
まず、我々が直視すべきエビデンス(証拠)があります。日本政府観光局(JNTO)が発表している訪日外国人客の宿泊データです。
2024年の統計を見ても、訪日客の宿泊数は、東京、大阪、京都、千葉、北海道といった、ごく一部の都府県に全体の6割以上が集中しています。一方で、東北や四国、山陰地方の多くの県では、そのシェアは1%にも満たないのが現実です。
これは、インバウンドがもたらす経済効果が、極めて限定的な地域での「特需」に過ぎないことを示しています。さらに、この特需には3つの大きなリスクが潜んでいます。
- 地理的制約: 物理的に訪れることが前提のため、交通の便が悪い地域はどうしても不利になる。
- 外部要因への脆弱性: パンデミック、国際情勢、為替の急変といった、自らコントロールできない要因一つで、需要は一瞬で消え去ります。
- 利益の流出: 観光客がお金を使う先は、必ずしも地域の事業者ではありません。外資系のホテルチェーン、都市部の免税店、空港の土産物店に、多くの利益が吸い上げられている現実があります。
「観光客が来てくれるのを待つ」という戦略は、あまりに不安定で、構造的な格差を是正するには至らないのです。
2.なぜ「越境EC」が地域創生の鍵なのか?
では、どうすればいいのか。答えは、発想を180度転換することです。「来てもらう」のではなく、「こちらから、届けに行く」。その最強の武器が、越境ECです。
- 地理からの解放: 越境ECを使えば、秋田の酒蔵がニューヨークの日本酒ファンに、愛媛のタオル職人がパリの目利きに、直接商品を届けることができます。もはや、空港からの距離はビジネスのハンデになりません。
- 顧客との直接的な繋がり: 観光客は、誰が、なぜその商品を買ったのか、顔が見えません。しかし越境ECなら、「サンフランシスコ在住の〇〇さんが、ご自身の誕生日に、この器を買ってくれた」という、生きた顧客データが手に入ります。このデータこそが、次の商品開発やマーケティングの、何物にも代えがたい資産となるのです。
- 利益率とブランドコントロール: 中間業者を介さず直接販売することで、利益率は格段に向上します。そして何より、作り手自らが、商品の背景にある「物語」や「こだわり」を、自分たちの言葉で世界に伝えることができます。ブランドの価値を、誰にも毀損されることなく、顧客の心に直接刻み込むことができるのです。
3.地方が世界で稼ぐための、具体的な3ステップ
しかし、ただECサイトを作れば売れるほど、世界は甘くありません。99%の越境ECは失敗すると言われます。成功するためには、戦略的なステップが必要です。
- 「地域の宝」を、世界の「価値」に再定義する 「この町には何もない」と地元の方が言う。しかし、海外の視点から見れば、それは宝の山かもしれません。例えば、「ただの古い古民家」は、「禅を感じる、静謐な空間」という価値になります。「名産のこんにゃく」は、「グルテンフリーで健康的な、奇跡のヌードル」として生まれ変わるかもしれません。内側の常識ではなく、外側の視点で、地域の資産が持つグローバルな価値を再発見することが第一歩です。
- 「個」の力で、小さく始める 行政が主導する、大きくて動きの遅いプロジェクトを待つ必要はありません。情熱を持った一人の酒蔵の当主、一人の工芸作家、一人の農家が、Shopifyなどのツールを使って、今日からでも世界への扉を開くことができます。私が運営する『NIHON WELLNESS BOX』も、大きな資本ではなく、個人の想いから始まった小さな実践です。たった一人の海外の熱狂的なファンを見つけること。そこから、全ては始まります。
- 「地域」として連携し、世界観を売る 「個」の成功事例が生まれたら、次は「面」で戦います。例えば、新潟県燕三条地域の複数の工房が連携し、**「職人の街から届ける、一生モノのキッチンツール」という統一された世界観でプロモーションを行う。あるいは、四国の複数の県が連携し、「お遍路文化に触れる、心と体を整えるウェルネスボックス」**を企画する。地域として連携することで、より強力なブランドストーリーを築き、マーケティングコストを分担できます。
結論:本当の「稼ぐ力」を、その手に
インバウンドは、地域にとって素晴らしい機会です。しかし、それはあくまで「お客様」。そのお客様に依存し続けるのではなく、自らの手で、世界中に「ご贔屓様(ファン)」を作っていく。越境ECは、それを可能にするための、最もパワフルな手段です。
それは、険しく、地道な道のりです。しかし、その先には、外部環境に左右されない、持て続可能な、地域本来の「稼ぐ力」が待っています。
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